■漢方薬、 混乱あれこれ |
お客様からよく耳にするお言葉にお応えします。 |
|
@ |
「発疹・発赤、痒みが出ることがあると書いてある。そんな副作用がある薬なのか?」
例えば「ショウキョウ」、「カンキョウ」あるいは「ケイヒ」はいずれもよく使われる生薬ですが、これらの生薬が入っている漢方薬にはこのような注意書きを書くことになっています。
そんなに危ない生薬なのか?実は生姜(しょうが)とシナモンです。食べたことがない日本人がいるでしょうか?食べて痒くなった経験がおありならのまないで下さい。漢方薬の注意書きはこの手のものが多いです。
ところで、卵を食べて痒くなったら副作用というのか?アレルギー等の過敏症を副作用呼ぶのはちょっと酷です。過敏症はその人独特の反応で予期できません。もし過去に経験がある場合は、他人が作ったものを口にするときにはレストランであれ薬屋であれ予め自己申告しておくべきです。総合感冒薬には高頻度で入っている消炎酵素の塩化リゾチーム、卵白から作られていますから要注意!
|
|
A |
「妊婦は相談するように書いてある。そんな心配のある薬なの?」
この文句はほとんどの医薬品に書いてあります。
漢方薬の場合は基本的には妊娠中の愁訴に対する効能がある場合は書かなくても良いことになっているのですが、メーカーの裁量で「つわり」の効能書きがある薬に書かれているものがあります。
また、妊娠中の愁訴を効能を記載することができる処方であっても、現に記載されていない場合はこの注意書きは記載しなければいけません。同一メーカー・同一処方でありながら、2つの商品があれば、この注意書きはあったりなかったりです。どの程度に必要な注意なのか推して知るべしと言ったところ。
漢方薬の場合、漢方薬や生薬による催奇形性は今のところ報告されていないようです。
|
|
B |
「授乳中の人は服薬してはいけないと書いてある。赤ちゃんに危険が及ぶような薬なの?」
これはダイオウという生薬が入っている薬に書いてあるのですが、ダイオウには下剤の働きもあり、その成分のアントラキノンという物質群は母乳を通して赤ちゃんに下痢を起こさせることがありうるということで、後遺症を残すような怖い働きはないし、必ず下痢するのではなく、あくまで「ありうる」ということですから、服薬し始めてから赤ちゃんがいつも下痢するようならやめればよいという考え方もあります。ひどい言い方だと思われる方もいるかもしれませんが、お母さんは具合が悪いからそれを服薬するのであって、嗜好品を食べるのとは訳が違うのですから、赤ちゃんが下痢する可能性があるからといってお母さんが我慢するのも、また問題だと思うのです。
|
|
C |
「私には漢方薬は合わないの。人それぞれ体質があるからね。」
それぞれの人に合わせるのが漢方薬!漢方薬は1種類だけではないので、「私」に合う漢方薬があるはずです。
ただし、カンゾウやショウキョウのような使用頻度の高い生薬に対する過敏症があり、どんな漢方薬を服薬しても痒くなってしまったりするということはありえない事ではありません。それならこの言い方は正しいです。
|
|
D |
「漢方薬は長くのまないと効かないでしょ」
例えば発熱と身体痛があるとき、解熱剤を服薬すればすぐに熱が下がり、痛みが治まりますが、それは治ったのでしょうか?しばらくして薬が切れてくると再び熱は上がってきます。やはり治ったとは言えませんよね。早く効くけど治らない!
一方、発汗していず、主に悪寒を伴って発熱と身体痛があるときに使う葛根湯の場合は、わざわざ身体を温めて熱を出させます。発熱という反応は免疫機能を賦活する働きがあるため、葛根湯はすぐには楽にはなりませんが、別の意味ですぐに効くのです。そして熱が出きったところで汗をかいて治ります。漢方薬はすぐには効いた気がしないけれど早く治る!
熱が高くもないのに解熱剤を使うのは、折角エネルギーを費やして熱を出そうとしているところに冷や水をかけるようなもので、体力を消耗させ病気を長引かせるだけです。
風邪薬として漢方薬が敬遠される一番の理由は効きが悪いとか遅いとかの問題以前に、鑑別が難しいからなのだと思います。3分診療では・・・無理かな?
|
|
E |
「俺が欲しいのはかぜ薬だ。」
「ドリンクタイプのかぜ薬」というご指定で、カコナール(葛根湯)を手に取るお客様に体調をうかがうと、寒気なし、身体痛なし、食欲なし、微熱、だるい、のどが痛いとおっしゃるので「お客さんにはそれは合いませんよ。こちらの方にしてください。」と別のドリンクを差し出したところ、効能に「発熱性消耗性疾患」とは書いてはあるものの「かぜ」の表示がないのでこの様に言われたのでしょう。
説明しても聞いてもらえず「しゃべるのも面倒なんだ。もういい。」とトローチだけ買ってお帰りになりました。何のための薬屋か?と、辛いひとコマでした。
そもそも病気は薬が治してくれるものではありません。治すのは自分の身体で、薬はそれを応援するだけです。それではどの薬が自分の身体を応援してくれるのか?それは、その漢方薬がどんな生薬の組み合わせなのかによって決まり、箱に書いてある効能書きが決めるものではありません。
異なる商品で異なる効能が書かれていながら、実は同じ処方(同じ薬)ということが漢方薬の場合にはよくあるのです。自分の症状とすすめられた漢方薬の効能書きが異なると思うときは「だまされている」と思わずに、処方の意図をお尋ねください。ご自分の症状と全然関係ないと思われた効能書きが実は仲間なのだと思えてきます。
|
|
F |
「この薬では熱が下がらない。高いばっかりで意味がなかった。」
うちの勧めた漢方薬を2回ほど服薬し、熱が下がらないので結局その日のうちにお医者さんに行き、解熱剤を服薬させるとすぐに熱が下がり、翌朝には治ったとのこと。「やっぱりお医者さんはすごい」そう思っているでしょうか?
解熱鎮痛剤は総合感冒薬には必ず入っていますが、副作用や相互作用、それに過敏症等に気を付けなければいけません。安易に勧めたくはないお薬のひとつです。「熱があれば解熱剤」それが絶対的に正しい理屈なら薬屋は解熱剤をおすすめします。発熱という反応は免疫機能を賦活する働きもあり、解熱剤を使い続ければ病気を遷延化させてしまうケースもよくあります。
解熱剤は熱を一時的に下げるだけで、治すのは自分の身体です。1回のんだだけで「治る」ことは原理的に有りません。のんでいた漢方薬の働きも認めてあげて下さい。
|
|
G |
「これをのんだ昨晩は寝汗がひどかった。副作用だ!」
私は言いました。
「お客さん、その薬にそんな作用はありませんよ(本当にない)。昨晩は暑かったですからね(本当に暑い夜だった)。私もずいぶん汗をかきましたよ(本当に汗をかいた)。」
お客さんは仰りました。
「言い訳は聞きたくねえんだよ。」
このような訳で、信用第一の薬屋は、花粉の量が多そうな年には予防に良い薬を勧めづらく、花粉の量が少なそうな年には勧めやすいもの。体調にとって環境も大きな要素です。 |